「ヨンイル、汗臭い・・!!」
「しゃあないやん、今日の6限目体育やったもん。」



初夏の陽気な日、少し強い日差しの下でのサッカーであった。
健全な高校男子が小一時間外で運動していたら汗をかくなとい
う方が無茶な注文だった。じっとりと背中に張り付いたカッタ
ーシャツの向こう側から龍の瞳がこちらをぎらりと睨んでいる。



「今すぐ湯で汗を流して、その悪臭の元を今すぐ断て。人間が
 かく汗にはエクリン腺から分泌されるものとアポクリン腺か
 ら分泌される汗がある。エポクリン腺とは全身の至る所に存
 在する汗腺の1つであり、エポクリン腺から分泌される・・・」

「はいはい、お風呂入ってくるわー。」

「・・・・・・。」





しなやかな獣を彷彿させる腰が、逞しく鍛えられたムダのない
筋肉が濡れて透けてヨンイルがすたすたと歩くのに合わせて揺
れるのが分かる。




(・・・僕はどうかしている)




今日は暑い、少し頭がぼぅっとするくらいにむしりとした暑さ
だ。




(同じ男だ。)





ヨンイルの均整のとれた肢体に少し鼓動が早くなるなんて、ど
うかしている。
男から見ても整った絶妙な身体はヨンイルのその柔軟な体さば
きを生み出す元だった。
同室になって何度だって見ている体は同じ男であるのにヨンイ
ルと比べて白く貧弱な身体しか持たない自分から見て羨望のも
のだった。悔しいから決してそのことはヨンイルに告げないが。



(僕には比較するものもないこの類稀な頭脳がある。別に運動
 によって頭角を現したいのではないのだからそれほど筋肉が
 必要だというわけでない。)


そうして頭をふいと右に振ったときに風呂場から暢気な声がか
けられた。




「直ちゃんシャンプー取ってー。」


なくなったー。






部屋に備え付けられたシャワー室からヨンイルの少しぼわんと響
いた声が上げられた。
入る前に確認しないか、低脳め。




「手を出せ、ヨンイル。シャ・・・」


詰め替え式のシャンプーを手にドアを開ければ強い力が己にかか
った。僕より少し大きな日に焼けた手が僕の細い腕をぐいと引い
た。




(ヨ・・・!)





そして案の定予期もしていなかったために転がり落ちるようにシャワ
ー室に入った僕は勢いよく流れる無数の水流に当てられ、服もろとも
びしょ濡れになる羽目になった。眼鏡が湯気でくもる、いや、その前
に服が張り付いて気持ちが悪い。





「何をするんだ!ヨンイル!!」

「直ちゃんも一緒に入ろうや。」

「まず僕にそのうかがいを立ててから手を引け、いや、何故このような
 狭い個室に高校男子が2人で入らなければならない!そもそもシャワ
 ーは1つしかないんだ、1人で入るのが当然だろう。見ろ、服を着て
 いたせいで身体に張り付いて不快だ!」

「直ちゃん大浴場行ってくれへんねんもん。」

「あんないも洗いでもされているような雑菌だらけの場所に潔癖症の僕
 が行くわけないだろう!」





そもそも風呂場は綺麗だと思われがちだが実の所は雑菌の宝庫だ。例え
ばレジオネラ菌という常在細菌の一種であるグラム陰性桿菌の増殖至適
温度は36度であり、水中での増殖が可能だ。空調設備の循環水中や入
浴施設においてしばしば見られる細菌であり、免疫力の弱い者などに感
染した場合レジオネラ肺炎を起こさせる原因ともなると言われている。
それだけでも既に潔癖性であり体が丈夫だとは言えない僕にとっては陰
鬱なものなのに、体育会系の部活に所属している人間も一緒に入ること
を考えれば、湯船に泥や垢などが浮いていることは用意に想像できる。
そんな所に浸かるなど考えるだけでおぞましい。






「君のような図太い神経の持ち主には僕の繊細な心情は分からないだろ
 うがな、手を離せ、ヨンイル!!」


「一緒に入ろやー。」




ぐぐぐ





「嫌だ、僕は今すぐこの服を脱いで新しい今日洗濯したばかりの清潔な
 衣服を身につけるんだ・・・」




ぐぐぐ




「直ちゃんー!」



「・・・ヨン・・・イルっ!!!」








そして力で適うわけもなく僕はすぐに力尽きて勢いよく落ちてくるシャ
ワーの雨に打たれる事になった。
ヨンイルが勝ち誇ったような笑みを浮かべているのがとても気に食わな
い、癇に障る。




「この道化が・・・!」
「直ちゃん、お湯に濡れて服透けとるで。」




そしてそっとヨンイルの唇が僕の首筋に当たる。



「ヨ・・・!」
「乳首透けとる。」




シャツ越しに食まれた感触に思わず体が震えた。熱い水滴は僕達の上に
落ち続ける。
ヨンイルの瞳が蒸気に揺らめき、そして欲情を孕んでじわりと熱く濡れ
る。上目遣いに悪戯な少し大きめでつり目がちな瞳で僕を見上げている。
顎から滴り落ちた水滴がヨンイルの鼻の頭にぽちゃりと落ちたと同時に
僕の喉を唾液が滑り落ちた。ヨンイルの唇は相も変わらず柔らかく布地
越しに僕の乳頭を挟んでいる、それがどうにももどかしく、恥ずかしく、
頬を赤く火照らせるがそれはきっと蒸し暑いこの空間のせいだと僕は頭
の中で呟いた。





「しよ?」





ヨンイルは笑う。
道化も笑う。



そして龍がぐるりと唸った。



ちろりと見えた赤い舌は僕を食らうためのものだろう。







「・・・・ァ・・ッ・・死ね。」






そして僕は今日も道化に騙されるのだ、この広い寮内にある大きくもない一室で
ひっそりと行われる戯曲に僕は1人騙されるのだ。
ボタンの間からすべりこんだ舌先に僕は体を小さく震わせた。
温かい雨はなおも降り続ける。





自分も混じって投稿してみました。ヨン直、しかも学園モノ。ヨンと直が同室同学年のチャットネタ(?)
を引っ張ってきました。サムライはある日直と出会えばいいと思います。お互い惹かれてヨンが嫉妬
してくれたら・・・・・いいな(ごくり。)レイロンは勿論同室ですよね。ソコはゆずれない。



てぃぃぃぃぃぃくびィィィィィィィィィ!!!

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